Application of Elementary Divisor Theory II (単因子論の応用II)

今日は前に示し損ねた命題を示しつつ, 多項式環の構造を見ていきます. また構造定理を使って部分群の個数を求めていきたいと思います.

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前々回の命題

Proposition) 単項イデアル整域における素元の剰余環は体を成す.

Proof) 素元を生成元とする単項イデアルはすなわち素イデアルであって, これを整域R, 素元p∈Rに対しRpと表す. [x],[y]∈R/Rp\{0} を適当にとると, x,y はRpの元ではないからxyもまたpと互いに素である. 従って[x][y]=[xy]=xy+Rp=xy+ap=1となるa∈Rが存在し, xy=1 (mod p) すなわち[x][y]=[1]とできる(別の言い方をすれば(xy)+(p)=(1)で, xyとpの最大公約数が1). よって[x]∈(R/Rp)^×だからR/Rpは体である■
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次の命題はLagrangeの定理から即座に導かれる基本的な命題だが, 深い理解のために別の解釈からも見てみよう.

Proposition) 素数位数の有限群は巡回群である

※素数位数でなくとも巡回群になる場合はあるということを注意する. 例えば剰余群Z/4Zは加法を演算として1+4Zが生成する位数4の巡回群<1+4Z>に等しい. またZ/24Zの部分乗法群S={[1],[5],[7],[11]}は2つの生成元<[5],[7]>を持ち, 位数4であるから命題の対偶が適用されるが, S={[1],[3],[9],[27]}は乗法巡回部分群であるが素数位数でないので逆は成り立たない.

Proof) Lagrangeの定理により, 素数位数pをもつ群Gの任意の有限部分群の位数は1かpである. ここで位数1に対応して{e} (単位群), 位数pにG自身が対応する. つまり群G自身をGの部分群と見做せば, eでない元a∈Gに対し, Gは{a}を含むような最小(かつ最大)の部分群である(a^(-1), eは群の構造から勝手に入る). aによる巡回群, すなわち{a}が生成する部分群<a>について,

\displaystyle{<a>=\bigcap_{\{a\}\subset G'\subset G}G'}

が成り立つから, {a}を含むような最小のGの部分群Gが<a>に一致する. つまりGは巡回群■

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Proposition) pを素数として, (Z/pZ)^nの位数pの部分群の個数を求めよ.

Proof) n=2, p=2,3として, 具体例から位数によって部分群の分類を行う.

\displaystyle{(Z/Z2)^2=\Big\{ \binom{[0]}{[0]},\binom{[0]}{[1]},\binom{[1]}{[0]},\binom{[1]}{[1]} \Big\} }

となるが, 簡便のためこれらを(0,0), (0,1), …などと書く.
前命題と同様Lagrangeの定理から, 部分群の位数は1, 2, 4のいずれでなくてはならない.

(i) 位数1(1つ選ぶ場合):
{(0, 0)}のみ. それ以外は位数≧2を持つ.

(ii) 位数4(4つ選ぶ場合):
(Z/Z2)^2自身のみ.

(iii) 位数2(2つ選ぶ場合):
{(0,0),(1,1)}, {(0,0),(0,1)}, {(0,0),(1,0)}の3つ.

※{(0,1),(1,0)}は群にならない.

同様の考察をp=3の場合について行うと,
位数3の部分群は
{(0,0),(1,1),(2,2)},
{(0,0),(1,2),(2,1)},
{(0,0),(1,0),(2,0)},
{(0,0),(0,1),(0,2)}
の4つ.

こうしてみていくと, G=(Z/pZ)^nが確かに巡回群の直積となること, すなわちn個の各要素に対し, 一つの生成元0≠a∈Gがあって<a>=Gとなることが了承される. よって位数pのある部分群S_σは,

S_σ=<a_σ>=<(a_σ(1),a_σ(2),..,a_σ(n))> ((0,…,0)≠a_σ(k)∈Z/pZ)

なる形に書ける. この部分群はa_σ, すなわち生成元のn個の要素の選び方によって決まるが, 各要素が位数pであるから生成元候補は0を除くp^2-1個.

一方, 例に挙げた位数3の部分群の一つ目を見ると分かるが,

{(0,0),(1,1),(2,2)}=<(1,1)>=<(2,2)>

であって, 部分群は0を除くp-1個のどの元を生成元としても同じ群を生成するので, p^2-1個の生成元候補にはp-1個の重複がある.

従って(Z/pZ)^nの位数pの部分群の個数は(p^n-1)/(p-1)■

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単因子論としては他に代数的閉体上のJordan分解を見たいが, 次くらいに有限群のSylowの定理の応用例として使ってみたいと思う.

最後に正規化群N_G(H)に関する考察をして終了する.

Proposition) Gを群, Hをその部分群とすると, HはHの正規化群N_G(H)の正規部分群で, N_G(H)はHを含む部分群でHが正規であるもののうち最大のものである.

Proof) N_G(H)={g∈G|gHg^(-1)=H}∋gをとれば, 定義からgHg^(-1)=HであってHは正規部分群. またHを含むようなGの部分群S’でHが正規であるようなもの全体をΩ={S’⊂G|S’⊃H, gHg^(-1)=H (g∈S’), S’は群}とおけば, N_G(H)∈Ω. N_G(H)⊂T’∈Ω (⊂は真に包含される)となるようなT’が存在すれば, Ø≠T’\N_G(H)∋gに対し gHg^(-1)=Hに関わらず, gはN_G(H)の元でないので矛盾. よってN_G(H)はΩの最大元■

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次回からSylow p-群をいじっていきます.