某電子コミックサービスから発行されているクーポンでは、購入金額に応じて次の金額に相当するポイントの払い戻しを受ける事ができる。
このサービスの中堅ユーザである私が、たくさん在る読みたい作品の中からどれくらい購入すると良いだろう?
という疑問を持ったのは自然のことだ。
こうした現実の(例えば最適化)問題を数理モデルで近似して解く場合、必要なパラメタが明示されている事は殆ど期待できない。
まずは隠れた重要なパラメタを調べる為に、得であると感じる心的状態に着目すると、コミックに対する嗜好や金銭感覚一般、経済状況に応じて、同じ金額でもコミックへの出費に対する感情には個人差があると考えられる。
従って「読みたいコミックへの出費について、どれくらいネガティブな感情を持つか」を表すスケール・パラメタ\(b\)を導入する。
このパラメタは\(b>0\)で、小さい程ネガティブな感情を持つと解釈する。
払い戻し体系から導出される(払い戻し金額を表す)関数に、金額に応じたネガティブな因子\(e^{-x/b}\)を掛けてスケーリングした関数\(g\)を、得度を表すものとして次のように定義する。
\[ \forall b>0,\, g(x,b)=\begin{cases} 0 & \text{if }\,x<10 \\ \frac{x}{2b}e^{-x/b} & \text{if }\,10\leq x<100 \\ \frac{x}{b}e^{-x/b} & \text{if }\,100\leq x<200 \\ 200 e^{-x/b} & \text{if }\,200\leq x \end{cases} \]
パラメタ\(b\)に応じたグラフは次のようになる。
そうなるように指数関数を掛けたので当然のことではあるが、この簡単な数理モデルから直ちに次のことが分かる。
尚、\(g\)を\(x> 20\)で微分すると\(\frac{d}{dx}g(x,b)=-\frac{20}{b^2}e^{-x/b}<0\)となり、2万円以上購入しても得度は上がらない。
最後に電子コミックサービス側から見た視点では、(このモデルにおける)\(3\leq b<5\)辺りのユーザの数を最大化するように還元率や区分点 (1万, 2万等)を決めると、新規~中堅ユーザが課金し易い体系と解釈でき、一つの指標についてではあるが広告としての効果が最大化される。
この\(b\)をユーザ情報から導出するestimatorの構成には、様々な方法がある。