地方への移転: 動物的独立の実験

移転から二週目に差し掛かってみて, いよいよ活動の準備が整ってきた.

初期は住居やインフラの整備が優先されるので, どうしてもマイナスをゼロにすることに忙しく, 食事も思うようには行かなかった (それよりも先んじてクライミングに行くのは, クライミングが歯磨きやフロスのような習慣になっているからだろう).

あとは車だが, これはもう少し腰を据えて吟味していかないといけないだろう. 幾つかのディーラーに当たって話を聞いてみたところ, 多少推測で補間した上で大きく次の二つの理由により価格高騰と新車の納車期限延長が引き起こされていると見られる:

  • 半導体・外車[1]ここでの外車は, 日本車であっても製造拠点が海外にあるものも含む.台数不足 (輸入・便数制限),
  • 製造拠点での労働力の不安定性 (輸入車/新車の売り上げ低迷による雇用の縮小・感染等による工場閉鎖),

何れにせよ中古車もニーズが高くなっており, 通常考えられない値段がついている (ごく一時期ではあるが, 事業用中古車が新車を上回る値が付いていたそうだ).

私が移転して来たことを話すと, 移り住んだ地域の人には必ず最初に「お仕事で?」とその理由を聞かれる. 聞いてる方に深い意味はないのだろうが, 返答に窮して「半分仕事です」等とお茶を濁すのが通例になった. 「後の半分は?」と聞かれれば, 山が好きでと言う.

それらが嘘という訳ではないが, 私自身今住んでいるこの場所を移転先に選んだ理由は明確では無く, 先行きを見通したカンのようなものに頼った部分があるので, 言語化すると大変複雑化するのだ. 今回はその内の一つだけを言語化するという試みをしてみよう. 標語的に言えば, (動物的)独立の実験である.

生活環境が自然に近い — 人口が少ない, 山が多い — ことは前提条件であった.

私の移住した地域はまだましだが, 所謂山々が連なる環境では, 除雪や倒木の除去はその一部または全部が自治対象となる. 雇用や保安, 教育も同様のことが言える. 物資や食料の供給も, 供給されないということは日本では余程の集落で無ければ無いと思うが, 限定的である地域はそこそこある. 程度問題ではあるが, このような行政の介入が矮小化されるような環境で快適に過ごせるようになることが実験その一である. これは段階を踏む実験である.

— というのは勿論半分は建前で, 「山が好き, 自然が好き」というのが私の中に先に無ければ, 同じ実験でも取り得る方法は違っただろう. 壮大な絵を描くなら, 意義を忘れたとしても楽しく継続できるものでなければ意味がないのである.

Footnotes

Footnotes
1 ここでの外車は, 日本車であっても製造拠点が海外にあるものも含む.