最近風邪をひいとりまして、先日なんぞ仕事まで休んで病院へ出張ったわけです。
風邪とは全く関係ない耳鼻科ですが、ともかく予約があったので行きました。
そこで待ってると、横にじいさんが座ろうとしていたので、席を空けるのに奥へ詰めました。
どうもどうも、そう言って座ってしばらくして僕が本を読んでいると、変わった本を読んでますね、その本は一体何ですかと話しかけてきたのでした。
これは数学の本ですと答えました。
すると、楽しいですかと尋きました。
そうすると、楽しいですと答えました。
それから少し問答があって、じいさんの昔の話を色々聞きました。商業系の学科を旧制の高等学校で学んだそうで、簿記を薦めてきました。
仕事で知識くらいは要るので考えておくと言いました。
旧制の学校というのがいかにいいものかということを話しました。僕も旧制の方がずっといい印象を受ける。何といっても下駄と角帽だよ、君、なんてことを言うのである。
しかしじいさんは商業は異端、わたしらは異端と言っていました。どういうことかと思ったが、ははぁ、このじいさんは理学をある種の正統な学派とでも考えていて、それで異端と呼んでるのかも知れない。商業は、そうだね、その文脈でいけば少なくとも生きる上で必要なものだから、学問と言うと確かに違和感はある。
歯並びががっしりとしてるじいさんは、話好きで、終始にこやかでした。
祖父は晩年こそ自閉気味にほとんど口もきかない(きけない)状態でしたが、元来ひょうきんで、よく喋るときの様子はこんな感じだったと思います。