明けましておめでとうございます。
年明けという節目に、改めて自己を省みることは稀ですが、この時期になると、かつて知遇を得た方々、たとえ一時の交流であっても、その繋がりを想起することがあります。
昨年、私はアイスクライミングやアルパインといった登山活動に身を投じました。これらは資格や目に見える報償ではなく、純粋な経験です。理学、特に数学の文脈において、経験則は理論の構築において最も忌避されるべき根拠とされがちです。しかし、生活の重きを登山に置く山の民を目の当たりにし、その世界における経験と実力の圧倒的な力を痛感します。
これを単なる自己満足と片付ける向きもあるかもしれませんが、私にとってそれは、恐怖や過酷な環境、そして自己の技量不足に対し、日々の修練をもって対抗するための確信的な指標になり得るものです。
経済学におけるストックとフローの概念を援用すれば、人はストックの比率を高めるべきだと言われます。しかし、何が真のストックであるかは自明ではありません。経年変化する肉体に宿る経験がストックではないとするならば、時代や政治の変遷に晒される建物や株式、メディアコンテンツもまた、極めて流動的な存在に過ぎないのではないでしょうか。金銭も、関係も、信用も、恐らく例外ではありません。
私にとって、これまでの産業界における歩みもまた、ポジティブな意味における一つの経験的ストックに他なりません。今年は、この蓄積された知見を念頭におきつつ、より根源的な数学研究へと再投資する一年にしたいと考えています (今年は論文を2本出そうと思います)。