Application of Elementary Divisor Theory (単因子論の応用)

「3で割ると2余り、5で割ると2余り、7で割ると3余る最小の数は何か?」

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環論の応用は, 剰余定理に見られるようにそれぞれ性質P, Qを持った数x, yの演算*による解zに見られることが大きい.

有理整数の剰余環においてaが「3で割ると2余る」性質を,

a≡[2]∈Z/3Z

と表す.

同様の表示によって問題の性質を満たすような数aは,

a≡[2]∈Z/3Z
a≡[2]∈Z/5Z
a≡[3]∈Z/7Z

なる3つの条件を満たす.

3Z, 5Z, 7ZはそれぞれZの単項素イデアルで, Chinese Remainder Theoremに従えば次の同型が成り立つ.

Z/(3Z\cap 5Z\cap 7Z) \simeq Z/3Z\oplus Z/5Z\oplus Z/7Z

今aを求めるために, 次の考察をする.

3Z, 5Z, 7Zはいずれも互いに素であるから, (3Z, 5Z∩7Z=35Z), (5Z, 3Z∩7Z=21Z), (7Z, 3Z∩5Z=15Z)も互いに素である. すなわち一つ目を考えれば, 3Z+35Z=Zなることから或る自然数x, yがあって

3x+35y=1とできる.

大きい方から剰余の関係を求めて

35≡2 (mod 3),
3≡1 (mod 2).

逆から辿って

1≡3-2=3-(35-3*11)=3*12-35

つまりx,yは12と-1であって(3,35)→(12,-1)なる一対一対応がつくことが分かる.

同様に(5,21)→(-4,1), (7,15)→(-2,1)を得る.

これら右側の数同士を掛け合わせた(-35,21,15)は, それぞれ(Z/3Z, Z/5Z, Z/7Z)上の単位元で, かつ異なる剰余環上0となるものの組である. なんとなく, 剰余環の族に対する単位元の組を求めることは, ベクトル空間における準同型(一次変換)を自然な基底における座標で表現すること, あるいは固有空間に対するスペクトル分解に似ている.

Chinese Remainder Theoremから, 求めるaは

a≡2*(-35) + 2*21 + 3*15≡17 (mod 105)

となり, aは最小なので a=17 を得る.

※ここでmod 15 (=3+5+7)でなくmod 105とするかは, イデアルnZを乗法群として考えているから. 上記ではnZは乗法群として, Z/nZは加群として暗黙のうちに考察されているが, それを明示するために記号が使い分けられる.

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先ほど少し触れたように, 剰余環における単位元を求めることとベクトル空間における一次変換の表現行列を求めることの関連が見たい.

そこで今回の準備の下で, 次回以降Z部分加群Mとして,

M=\Big\{x\in Z| xE_3\cong([2],[2],[3])\in Z/3Z\oplus Z/5Z\oplus Z/7Z \Big\}

を考察する(有益な結果が出ないかも知れないが). a∈MはMにおける最小数を与える.