総和の話の続きです.
【(iii)→(ii)】
絶対収束すれば各項の順序を並び替えた級数も収束する.
各項の順序を並び替えるという操作は, すなわち添字集合Nから自己同等写像を考えることに等しいから, (ii)が成り立つ.
※各項が定符号(正)の級数というのは, もちろん足される項数に応じて単調増加する. 前回で触れたように, 各項の絶対値の分解が
|a_n|=(a_n+)+(a_n-)
で与えられ, 右辺は2項とも正である. つまりそのような級数が収束するということは, 個々の項が他の項の干渉に拠らず, 収束するだけの小ささを持っているということである.
【(iii)→(i)】
直接示すのは難しい(具体から抽象は難しい)ので, 対偶を示す. つまり総和可能でないなら, 絶対収束しないことを示す.
仮定より, (a_n)n∈Nが総和可能でなければ,
(∃ε>0)(∀f_0∈F)(∃f⊃f_0)(|s-s_f|≧ε)
を満たすような有限集合fがある. Fは前回のとおりKの有限部分集合全体の集合である.
このとき実は, 前回a_kが0でないようなk全体の添字集合(k∈K)は有限濃度であるという命題で触れたとおり, 有限部分集合の包含関係に関する単調増大列を作ることで, |s-s_f|が如何ようにも大きくとれる. このことは, 正項級数(全ての項が正の級数)(a_n+)が発散することを意味するのである. 従って絶対収束するなら総和可能である.
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さて今日は, 距離空間における位相について考えていたので, その話をしたい.
距離空間における距離と位相は, 開集合Oを, Oの任意の点aにおいて, B(a,ε)⊂Oなる開球B(a,ε)が取れるもの, を定義として, 一対一に対応する. そこでdをEuclid距離関数とすれば, このような性質を持つ任意の開球が第一加算公理を満たす, すなわち開集合Oの各点aにおける基本近傍系がたかだか加算個の開球によって構成される(Oに含まれるような開球B(a,ε)の中心と半径a,εを実数から取らずに, 有理数Qから取ってやることで加算になる. 実際B_1=B(a,ε), B_2=B(a,η) (ε<η, ε,η∈Q)とすれば, B_2-B_1の間を埋めるような開球は加算個しか存在しない).
この距離空間(S,d)が第二加算公理を満たすための必要十分条件が, (S,d)が可分である, ということを確かめる準備として, 位相空間(S,Ω)が可分であるものを構成してみよう.
Sが可分であるとは, たかだか加算な部分集合MがあってSにおいて稠密となることである. すなわちたかだか加算の部分集合Mに対し, M^(ci)=Øであること, またはM^cに含まれるような(最大の)開集合がØのみであること, あるいは空でない任意の開集合Oに対してM∩O≠Ø (∀O∈Ω; O≠Ø)であることである.
そこで今S={a,b,c}としよう.
密着位相Ω={S,Ø}に対しては, 任意の部分集合Mに対してM∩S≠Øとなるので, Sの全ての部分集合が稠密である. これでは面白くないので,
Ω={S,Ø,{a}}とおこう.
さすれば, {a}を含むような任意の部分集合は稠密である.
これはM={a,*}とおいて, M∩O={a}∪…≠Øであるから明らかだろう.
次にΩ={S,Ø,{a,b}}であれば, 同様の考察で{a}または{b}いずれか一方でも含む部分集合がSにおいて稠密となる.
このような事実を直感的に表現すればどういうことになるだろう?
開集合が色付き, 閉集合が白色で表してあるが, 開集合が増えるほど稠密なものが増えるのだから, まさに(文字の)直感どおりである.
Mの閉包をadherenceの頭文字をとってa(M)と表すと, MがSにおいて稠密とは, a(M)=Sを満たすこと, すなわちMを含むような(Sにおける最小の)閉集合がSのみであることに他ならないことは, M^(ci)=Ø ⇔ a(M)=M^(ci)^c=Ø^c=S となることから明らか.
続く
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2012/11/6
用語に間違いがあったので修正しました. 「可分」→「稠密」に修正