今回は幾つかの例を交えて, 一様収束性の判定を議論していきます。
級数和の虚数を取る場合などは, fourier級数の扱いに慣れていればもっと楽な気がしますが・・その知識が欲しい。
やってみると、一様収束性の判定にはパターンがあるようで、慣れないものは長時間考え込むことになりました。
一様収束の定義の微妙さ?からか、実践できちんと解説してあるような記事が見当たりません。
残念なことに、定義域全域を幅εの「帯」で包み込めるような・・・などと上極限と勘違いしてるような説明がなされているものがあったり、私自身そうですが、一様収束をするのか広義一様収束するのか、答えは出ても微妙な不安が残ったりします。
そういった状況を懸念してか、ここで私が巡った思考などををなぞる形でアプローチ紹介しよう、というのが主旨です.
なお、重要と思った点などを注意書きとして「◇」で箇条書きします。
問1. fn(x)=nx(1-x)^n, x∈J=[0,1]
まず最大値を求めると, 端点の値はfn(0)=fn(1)=0.
x≠1とおけば, fn'(x)=0 を満たすようなx_0=1/(n+1)があって,
2階導関数fn”(x_0)=-n^n/(n+1)^(n-2)<0であるからx_0でfnは最大値 n/(n+1) * (1-1/n)^n = Mnをとる.
a, bに収束する二つの数列an, bnの積an*bnは極限値abをもつので, fnの一様ノルム||fn||→1 * lim[n→∞](1-1/n)^n = 1/e が定まる.
ところで連続関数列fnが一様収束するとき, 極限関数は連続である.
この対偶から, fnのx=0における右不連続性, すなわち||0-f(0+)||=||0-f(1/(n+1))||→1/e (n→∞)によって, fが一様でないことが示される■
◇一様収束を判定すると言っても、収束先の関数が最初から分かってるわけではない(勿論分かってる場合もある)。従ってまず(添え字は無視して)xだけの関数として、簡単に求められそうな上極限ないし下極限を考える。
◇対偶や自明な結果から余計な計算を省くと良い。例えば上でも扱ったように連続関数列なら、極限関数が連続なことが必要条件であって、それが満たされないような(不連続な)極限を一様不連続の根拠にしている(勿論このときパラメータとしての収束列x(n)とその極限x_a=lim[n→a]x(n)も適当にとる)。
また、各点収束しなければ一様収束もしないことも重要な事実だし、整級数は収束範囲内で広義一様収束する。従って整級数に関しては収束半径を計算するだけでことは足りるのである。
問2. fn(x)=Σ[m=1,n] sin(mx)/m , x∈[ε,2π-ε]=J, ε∈(0,π)
Moivreの定理からe^(mxi)=cos(mx)+isin(mx)が成り立ち, その虚数部をとって式を変形するとfn(x)=ImagΣ[m=1,n] e^(mxi)/m となる.
※Imag, Re等に加法的分配ができるのは, C∋a,bに対しImag(a+b)=Imag(a)+Imag(b)が成り立つから分かると思う.
※実はここにいたるまでに試行錯誤あらゆる展開を試して補題などを解いてる内に既に数時間経っていたのだが・・・・。
※ここでx=2kπ(k∈Z)のとき, fn(x)の実部は調和級数になり発散するが, fnはあくまで虚部なのでfn(2kπ)=0.
このことは, 後で0に収束する点列xn→0を使って連続関数列fnの一様性(x=2kπにおける極限関数の連続性)を確かめるときに使う.
そこで-ln(1-x)=Σ[m=1,∞] x^m/m (|x|<1)となり、|e^(xi)|<1を満たすことから,
lim[n=1→∞]fn(x)=-Imag ln(1-e^(xi))
対数関数は大きさと偏角で記述でき, a,b∈R, a+bi=z∈Cに対し ln(1-e^(xi))=zとおけば,
e^a(cos(b)+isin(b))=1-e^(xi)
両辺の実数部と虚数部を比較して,
e^acos(b)=1-cos(x)
e^asin(b)=-sin(x)
x≠2kπだから, sin(b)≠0∧cos(b)≠0を使ってe^aを消去するとtan(b)=sin(x)/(cos(x)-1)になるので,
lim[n=1→∞]fn(x) = -Imag ln(1-e^(xi)) = -b = Arctan[sin(x)/(cos(x)-1)]
∀x∈Jに対し特異点を持たないので, fnはf(x)=Arctan[sin(x)/(cos(x)-1)]にJ上広義一様収束する■
◇先に触れたx=0(または2kπ)における収束性であるが, f(x)はx→+0のとき-π/2, x→-0のときπ/2となって不連続であるから, J=[0,2π]とすると広義一様収束しないのが分かる.
続く