表現論1

入門しました。

今回(に限らず)ノート形式でトピックを絞らず書いてるので余り見やすくはないかなぁ。いずれ整理します。
ガロアコホモロジーのKummer理論への応用が面白い。専門でもないけど、Whitney–Grausteinの定理をちゃんと理解したい。また次回。

prop. 群Gと体Kを固定する(Homを書くときKは省略する). {\rm Hom}(V,W)\cong V^*\bigotimes Wと同一視した時, これらはGの同じ表現を与える.
pf. まず上の同型を示す. \lambda\otimes w\in V^*\bigotimes Wに対し,

    \[(\lambda\otimes w)(v)=\lambda(v)w=\psi(v)\ (\forall v\in V)\]

と置けば, \psi\in {\rm Hom}(V,W)だからV^*\bigotimes W\subset {\rm Hom}(V,W). 逆に\psi\in V^*\bigotimes Wは全てのv\in Vの行先で決まり, これをw_i=\psi(v_i)と書くと, \psi = \sum_i \lambda_i \otimes w_i\ (\lambda_i(v_j)=\delta_{ij})によってV^*\bigotimes Wの元と見做せる. これらのV上のK線形性は明らかだろう. 以上で

    \[{\rm Hom}(V,W)\cong V^*\bigotimes W\]

が示せた. 今{\rm Hom}(V,W), V^*\bigotimes Wの自然な表現をそれぞれ\tau,\ \muとする(V, Wは始めからGの表現空間として, 特に断りなくgv, g’w等と書く).

このとき,

    \[\begin{array}{lcl} \tau(G){\rm Hom}(V,W)(v)\ni (\tau(g)\psi)(v) &=& g'\psi(g^{-1}v) \\ &=& g'(\lambda\otimes w)(g^{-1}v)\ (\exists (\lambda,w)\in V^*\times W,\ \psi=\lambda\otimes w\ at\ v) \\ &=& \lambda(g^{-1}v)g'w \\ \mu(G)(V^*\bigotimes W)(v)\ni (\mu(g)\lambda\otimes w)(v) &=& (g^*\lambda\otimes g'w) (v) \\ &=& \lambda(g^{-1}v)g'w \end{array}\]

これで\tau,\ \muが同型を通じて同じ表現であることが示せた■


def(intertwiner). (\rho,V),(\sigma,W)をGの表現とする. このときT\in{\rm Hom}(V,W)がintertwining作用素であるとは,

    \[T\circ \rho(g) = \sigma(g)\circ T \ (g\in G)\]

が成り立つときを言う. Tが可逆なら, VとWは同値な表現といい, V\simeq Wと表す. {\rm Hom}_G(V,W)でintertwining作用素全体を表す.

lemma. (\rho,V),(\sigma,W)をGの有限次表現とする. このとき{\rm Hom}_G(V,W)\simeq (V^*\bigotimes W)^Gが成り立つ(*^GはG不変元全体の集合).
pf. T\in {\rm Hom}(V,W),\ v\in Vに対し, gT(v)=\sigma(g)T\rho^{-1}(g)(v)=T(v)\ (\forall g\in G)\Leftrightarrow T\in {\rm Hom}_G(V,W)だから, {\rm Hom}_G(V,W){\rm Hom}(V,W)のG不変元の全体である(特にG部分表現になる).
上のKベクトル空間としての同型

    \[\iota: {\rm Hom}(V,W)\cong V^*\bigotimes W\]

によってGの表現空間として同一視できるから, {\rm Hom}_G(V,W),\ (V^*\bigotimes W)^Gも表現空間として同一視できる(G不変元の全体はベクトル空間として部分空間になり, 特に表現空間として部分表現になることに注意). 上の同型の制限写像を\iota|_{{\rm Hom}_G(V,W)}=\eta:{\rm Hom}_G(V,W)\cong (V^*\bigotimes W)^Gと置く. 有限次表現を仮定してるから, Kベクトル空間としての基底\{e_1,\ldots,e_n\} \subset {\rm Hom}_G(V,W)が存在し, \rho(g),\ \sigma(g),\ \etaはそれに関する正則表現行列で表される. それらも同じ記号で書けば, 同型で写りあう基底への作用が同じだから,

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が可換になる. 以上で{\rm Hom}_G(V,W)\overset{\eta}{\simeq}(V^*\bigotimes W)^Gが示された■


Lemma(Schur). (\rho,V),\ (\sigma,W)をGの有限次既約表現とする. このとき,

    \[{\rm Hom}_G(V,W)\simeq \begin{cases} \mathbb{C} & V\not\simeq W \\ 0 & V\simeq W \end{cases}\]

が成り立つ.

省略■

※有限次元表現に関して, 既約表現⊂分解不能表現が成り立つ. 実際, 定義から有限次元表現の直和因子は部分表現だから, 直和因子⊂部分表現が成り立ち, 対偶により逆の包含関係が必ずしも成り立たないことが示せる.


prop. Rを実数体とするとき, {\rm Spec}(R[x])=\{0\}\cup \{ f\in R[x] | f\ is\ irreducible\ over\ R \}
pf. Rは体だから, 環としてのイデアルは自明. よって零イデアルのみがRの素イデアル. これがR[x]でも素イデアルとなるのは, \bigcup _{a\in R[x]} {\rm Ann}(a)\subset Rによる. またR[x]がユークリッド環だからUFDであり, 既約元と素元は同じなので, 零イデアルでなければ素イデアルはR上の既約多項式の生成するものしかない.


記号を次のように導入する. 一般に環の拡大A\subset Bについて, BにおけるAの整閉包を\overline{A(B)}と書く.

prop. A\subset Bを環の拡大. \overline{A(B)}=B (BはA上整). このとき次が成立する.
(i) {\bf b}\subset Bをイデアル, {\bf a}={\bf b}^c=A\cap {\bf b}なら, \overline{(A/a)(B/b)}=B/b.
(ii) \overline{(S^{-1}A)(S^{-1}B)} = S^{-1}B (SはAの乗法的集合).

pf. (i) {\bf a}{\bf b}の縮小イデアルだから, 包含写像i:A\subset Bと自然な射影\pi:B\rightarrow B/{\bf b}に対し, \pi\circ i:A\rightarrow B/{\bf b}の核がi^{-1}({\bf b})={\bf a}になる.
そこで同型定理によって関係式:

    \[A/{\bf a}\cong {\rm Im}(\pi\circ i)\subset {\rm Im}\pi = B/{\bf b}\]

が得られるので, A/{\bf a}は自然にB/{\bf b}の部分環と見做せる. 今度はこのA/{\bf a}からB/{\bf b}への包含をjと置くと(これは単射),

x\in Bの整従属を表す関係x^n+a_1x^{n-1}+\ldots + a_n=0\mod {\bf b}で考え(つまり\piの像の中で考え), 次にa_i\in Aだったから, 係数a_iだけj^{-1}で自然にA/{\bf a}に引き戻せることから分かる.

(ii) x/s\in S^{-1}Bなら, 上の整従属関係をS^{-1}Bの中でs^nで割ったものを考えることによって,

    \[(x/s)^n + (a_1/s)(x/s)^{n-1} + \ldots + a_n/s^n = 0\]

を得る. これはx/sS^{-1}A上の整従属関係を示している■


prop. L/Kが体の有限次拡大なら. [L:K]_s=|{\rm Hom}_K^{al}(L,\overline{K})|である.
pf. L=L_s, すなわち分離拡大の時は明らかであるからL\neq L_s,\ {\rm ch}K=p>0とする. まずL=K(\alpha)となる非分離的な元\alpha\in \overline{K}を一つ固定して考察する. LにおけるKの分離閉包をL_sとすれば, L/L_sは純非分離的である. 実際\alphaのK上の最少多項式\phi(x)は, K上既約な分離多項式g(x)と正整数b>0によって

    \[\phi(x)=g(x^{p^b})\]

と表せられる. g(x)はモニックで, K上\alpha^{p^b}の最小多項式になっているから, \alpha^{p^b}\in L_s. 故にL/L_sが純非分離拡大であることが分かる. 上の既約な分離多項式gは次数を最小に取ってあるから, 1\leq j\leq q-1なるjに対し\alpha^j\notin L_s. よってp^b=qと置くと, \alphaは純非分離的な元として, L_sx^q-\alpha^qの形の最小多項式を持つことが分かる. よって[L:L_s]=[L:K]_i=q.

g(x)のK上の次数をnとすれば, {\rm deg}\phi(x)=nq. これは仮定より[L:K]に等しいのでn=[L:K]_sが分かる. \alpha^q\overline{K}での共役を\{\beta=\beta_1=\alpha^q,\ldots,\beta_n\}とすれば(\beta_j\ (j\geq 2)はLに入っているとは限らない), 分離性からこれらは全て相異なり, \delta_j\in {\rm Hom}_K^{al}(L_s,\overline{K})\beta_j=\delta_j(\beta)なるものが取れる. これらは明らかに相異なり, |{\rm Hom}_K^{al}(L_s,\overline{K})|\geq n=[L:K]_sであるが, 逆の不等号は常に言えるので結局

    \[|{\rm Hom}_K^{al}(L_s,\overline{K})|=[L:K]_s\]

が言える. 最後に準同型の拡張\upsilon:{\rm Hom}_K^{al}(L_s,\overline{K}) \rightarrow {\rm Hom}_K^{al}(L,\overline{K})が一意的に存在すること, すなわち異なる準同型の個数を変えないことを言う.

拡張の存在はSteinitzによる代数閉体の存在定理から従う. \upsilon(\delta_j)=\eta_jとして, \alpha^q=\beta\in L_sより,

    \[\eta(\alpha)^q=\eta(\beta)=\delta(\beta)\]

を得る. 上で注意したように, x^q-\eta(\beta)\eta(\alpha)L_s上の最小多項式である. 正標数pを仮定してるからx^q-\eta(\beta)=(x-\eta(\alpha))^qで, この根は一つしかないので, \eta(\beta)を決めれば\eta(\alpha)も一意的に決まる. L=K(\alpha)なので\eta\alphaでの値で決まるから, これは確かに一意的な拡張になっている■


prop (Hilbert’s Theorem 90). L/Kが有限次ガロア拡大なら, L,\ L^\times係数の1次元ガロアコホモロジーは自明である.

以下記述を簡単にするためG={\rm Gal}(L/K)と書く. h\in Z^1(L/K,L^\times)を1コサイクルとする. x\in Lに対し

    \[f(x) = \displaystyle{\sum_{\tau\in G} h(\tau)\tau(x)}\]

とおく. \tau\in G\subset {\rm Hom}_K^{al}(L,\overline{K})は, Lに値を取る相異なる準同型写像として一次独立である(任意のx\in Lについて線形関係を満たすなら, 係数が0でなくてはいけない). またL^\times\ni h(\tau)\neq 0だから, f(x)\neq 0となるxがある. \sigma\in Gなら,

    \[\begin{array}{lcl} \sigma(f(x)) &=& \sum_{\tau\in G} \sigma(h(\tau)) \sigma\tau(x) \\ &=& \sum_{\tau\in G} h(\sigma\tau)h(\sigma)^{-1}\sigma\tau(x) \\ &=& h(\sigma)^{-1} \sum_{\tau\in G} h(\sigma\tau)\sigma\tau(x) \\ &=& h(\sigma)^{-1}f(x) \end{array}\]

故にh(\sigma)=\sigma(f(x))^{-1}f(x)=\sigma(f(x)^{-1})(f(x)^{-1})^{-1}=h_{f(x)^{-1}}(\sigma)となるx\in Lf(x)\in L^\timesがあり, hはコバウンダリーになる. よってH^1(L/K,L^\times)=\{1\}