可換環1

数学とは全く関係の無い用事で忙しくしてます。
腰を据えてじっくり取り組める時間が欲しい。

Lemma 1.1: Aを(可換)環, Iを冪零元から成るイデアルとする. a∈AのA/Iにおける像が単元なら, aはAの単元である.
Proof 1.1: Z/9Zの唯一の極大イデアルI_3=I_6=3Z/9Z=\{0,3,6\}を見ると分かるが, Aの単元A^\times{\rm nil}(A)は交わらない. つまりA^\times \cap {\rm nil}(A) = \emptysetを満たす. 実際x\in {\rm nil}(A)x^n=0を満たせば(ax)^n=0 (\forall a\in A)だから, ax=1なるa∈Aが存在すれば矛盾をきたす.
Iは{\rm nil}(A)の部分イデアルであるから勿論単元と交わらない. そこで剰余環A/Iの上で[a][b]=[ab]=ab+I=1+I ([*]はA/I上の像の意)を満たすb∈Aがあるなら, 同じbについてab=1である■

Lemma 1.2: A_1,\cdots,A_nを環とするとき, A_1\times \cdots \times A_nの素イデアルは

    \[A_1\times \cdots \times A_{i-1}\times P_i \times A_{i+1} \times \cdots \times A_n,\ P_i\text{ is prime ideal of }A_i\]

の形である.

Proof 1.2: 各iに対しP_iの生成元(の一つ)を1_{A_i}=1\neq 0として埋入した像e_i=(0\cdots 01_{A_i}0\cdots 0)に関し, e_ie_j=\delta_{ij}が成立する. これは直積環と素イデアルの定義から係数を無視して素イデアルにおける積の性質を使えば, e_ie_j\in P \Rightarrow e_i\in P\vee e_j\in Pが言え, 直積環の素イデアルをe_ie_j=0の場合を除いて第i=j要素がPの元であるようなもの全体として特徴付けることができる(尤も, 直積環の一般の元は必ずしもe_jの形をしておらず, むしろa=a_1e_1+\cdots + a_ne_n\ (a_k\in A_k)と書けるが, 極端な例を使ってむしろ素イデアルの形を特徴付けられる)■

Lemma 1.3: アルティン環はネータ環である

Aをアルティン環とすると, A加群としてl(A)<\inftyを示せれば, Aの異なるA部分加群A_1\subset A_2に対し, l(A_1)<l(A_2)<\inftyが成立し, Aの有限組成列を作る部分加群全体がAの部分加群と一致し, 部分加群の集合に関する昇鎖条件から命題が言える.

まずAの極大イデアルは有限である. そうでないとすると, 極大イデアルp_1,p_2,\cdotsによる降鎖列

    \[p_1\supset p_1p_2 \supset \cdots \supset \cdots\]

が無限降鎖列を成すからアルティン環の仮定に反する. そこでp_1,\cdots,p_nを有限の極大イデアルの列とすると,

    \[I=\prod^n p_i=\bigcap^n p_i={\rm rad}(A)\]

と書ける. これも一応示しておく.

r=2の場合, p_1p_2\subset p_1\cap p_2は常に成立するから, 逆を示す. 極大イデアルは素イデアルだから, p_ip_jは互いに素である(つまりA=p_i+p_j). そこでa=au+av\ (\forall a\in p_1\cap p_2,\ \exists u\in p_i,\ \exists v\in p_j)と書け, au', av'\subset p_1p_2\ (\forall u'\in p_1,\ v'\in p_2). 後は帰納法による.

降鎖列

    \[I\supset I^2 \supset \cdots\]

は有限で止まるから, I^s=I^{s+1}なるs\in \mathbb{N}が存在.
そこでI^sをA加群と見做すときのannihilator (0:I^s)_A=\{a\in A|ax=0\ (\forall x\in I^s)\}をJとおくと,

    \[\begin{array}{lcl} (J:I) &=& ((0:I^s):I) \\ &=& \{ a\in A| axy=0\ (\forall x\in I,\ \forall y\in I^s)\} \\ &=& (0:I^{s+1}) \\ &=& J \end{array}\]

である. 今J=Aを示すと, I^sはA加群として0ということだから, イデアルの降列

    \[\begin{array}{lcl} A &\supset & p_1\supset p_1p_2 \supset \ldots \supset p_1\cdots p_{r-1} \supset I \\ & \supset & Ip_1 \supset \ldots \supset I^2 \supset I^2p_1 \supset \ldots \\ &\supset & I^s=0 \end{array}\]

を考えることができる.
このとき, 列の隣接2項をM,\ Mp_iと書けることに注意して, 同型M/Mp_i \cong (A/p_i)MによってM/Mp_iは体A/p_i上のベクトル空間と考えられる. 一方環Aのアルティン性により, これは有限ベクトル空間であって, その有限和の長さから

    \[l(M/Mp_i)<\infty \Rightarrow l(A)=\sum^{s-1}_i l(A_i/A_{i+1})<\infty\]

が言えて, 証明が完了するので, これからJ=Aを示す.

もしJ\neq Aと仮定すると, J\subsetneq J'\subset AなるJより真に大きいイデアルの中最小のイデアルJ'が存在する. J'x\in J'-JよりJ'=Ax+Jと書ける(JをJ’の部分A加群と考えるときのJによる左分解と考えられるが, J’の最小性より一つの元を付け加えて拡大したもの).
中山の補題(の対偶)により,

    \[\begin{array}{lcl} J' = J+IJ' &\Rightarrow & J'/J=I(J'/J) \\ &\Rightarrow & (1+x)J'/J=0\ (\exists x\in I) \\ &\therefore & J'/J=0\ (\because 1+x\in A^\times) \\ & \Rightarrow & J'=J \end{array}\]

を条件I={\rm rad}(A),\ J'\neq Jにより逆に辿り,

    \[J'\neq J+IJ' \Rightarrow J'\neq J+Ix\]

を得る.

J'の極小性(J'/JのA加群としての単純性)より, J'=J+Ax\supsetneq I+Ix=Jでないといけない. これはIx\subset Jを意味するが, (J'-J)\subset (J:I)=Jとなり, 矛盾. \therefore J=A

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