基底(位相空間)

開基と位相空間の基底って別物と扱ってたんですが, まったく同じものですね. 確かめてみるまで分かりませんでした.

位相空間論の本としては松坂和夫氏の「集合・位相入門」を持ってますが, こちら少し記述が古いのかもしれません. 下に挙げる二つ目の定義には触れていません(訂正: 書いてありました). そこでの(位相空間の)基底の定義は次のようになっています.

位相空間(X,\mathfrak{O})が与えられたとき, \mathfrak{O}の部分集合系\mathfrak{B}(X,\mathfrak{O})の(開)基底であるとは, 任意の開集合O\in \mathfrak{O}について, O=\bigcup_\lambda B_\lambda を満たすように開部分集合族\{B_\lambda\}_\lambda\in \mathfrak{B}がとれることである(添字λが使われているが, 可算である必要はない).

一方「開基」とは, 上と同じ記号のもと次の条件を満たす開集合系\mathfrak{B}です.

B1. X=\displaystyle{\bigcup_\lambda B_\lambda,\ B_\lambda\in \mathfrak{B}}
B2. \forall B_1,\ B_2\in \mathfrak{B},\ \forall x\in B_1\cap B_2;\ \exists U\in \mathfrak{B},\ x\in U\subset B_1\cap B_2

以下前者と後者の\mathfrak{B}をそれぞれ\mathfrak{B}_1,\ \mathfrak{B}_2とし, 性質を比較して\mathfrak{B}_1=\mathfrak{B}_2を示します.

(i) \mathfrak{B}_1\subset \mathfrak{B}_2
Xの全ての開集合が\mathfrak{B}_1の元の和で表され, (位相空間定義から)X自身は開かつ閉な集合だから, \mathfrak{B}_1は性質B1を持つ. またB_1,\ B_2\in \mathfrak{B}_1は開集合であるからB_1\cap B_2=\bigcup B_\lambdaとなるような\mathfrak{B}の元の族をとれる. それらのうちの任意の一つB_\lambdaB_\lambda\subset B_1\cap B_2を満たすのは明らかであるから, 性質B2も満たす. \mathfrak{B}_1は開集合系であるから, \mathfrak{B}_2を含む.

(ii) \mathfrak{B}_1\supset \mathfrak{B}_2
開集合O\in\mathfrak{O}の任意の点xに対し, x\in B_x\in \mathfrak{B}B_x\subset Oを満たす開集合B_xをとる(このようなB_xは必ず存在する. 例えO\subset B_xであってもO\cap B_x=Oに含まれる開集合をB_xと置けば良い). xを含み, Oに含まれる\mathfrak{B}の元全体B(x)というのはxの基本近傍系をなすが, \mathfrak{B}の族として強調してB(x)B(x)=\{B_{\lambda(x)}\}と記せば, O=\bigcup_{x\in O}B(x)=\bigcup B_\lambdaとなる. これは最初の開基の定義を満たす.

訂正ついでに閉基についても追記しておきます.

閉集合系の部分集合系\mathfrak{F}\subset \mathfrak{U}が位相空間Xの閉基底であるとは, 任意の閉集合が\mathfrak{F}の共通部分で書けることとは同値. つまり次と同値.

    \[\forall A\in \mathfrak{U},\ \exists \{F_\lambda\}_\lambda\subset \mathfrak{F},\ A=\bigcap_\lambda F_\lambda\]

あるいは同値な次の条件F_1,\ F_2を満たすことを言う.

F1. \emptyset=\displaystyle{\bigcap_\lambda F_\lambda,\ F_\lambda\in \mathfrak{F}}
F2. \forall F_1,\ F_2\in \mathfrak{F},\ \forall x\notin F_1\cup F_2;\ \exists G\in \mathfrak{F},\ x\notin G\supset F_1\cup F_2

これも上と同じように, こうして別々に定義された閉部分集合族をそれぞれ\mathfrak{F},\ \mathfrak{F}'と定義して, 同じ集合族であることを示してみよう.

(i)\mathfrak{F}\subset \mathfrak{F}'
条件F2の仮定を満たすF_1,\ F_2\in \mathfrak{F}x\notin F_1\cup F_2をとっておく. F_jは閉集合だから, \mathfrak{F}のある部分集合族の共通部に書ける. F_i = \bigcap_j F_{ij}\ (F_{ij}\in \mathfrak{F}\ (\forall j))とすれば,

    \[F_1\cup F_2 = \bigcap_{j,k} (F_{1j}\cup F_{2k})=\bigcap_l G_l\ (G_l\in \mathfrak{F})\]

最後の等式は, F_{1j}\cup F_{2k}が閉集合だから更に\mathfrak{F}の部分集合族の共通部で書くことで得られる. mを十分大きくとれば, x\notin G_mとなる. G_m\supset F_{1j}\cup F_{2k}\supset F_1\cup F_2は明らかである. よって条件F2を満たす. F1を満たすのは明らか.

(ii)\mathfrak{F}\supset \mathfrak{F}'

前から何となく気になってたのですっきりしました.

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