過去に飛ばしていた既知の命題を自分で示してみた単なるノートです. Atiyah-MacDonald出典.
平坦性という性質に束論で抽出される性質が関わっていることをこの本で初めて知った. こんなところで使われているとは・・!
整数環の判定に関する検証
をZ上で生成される環とする. ならよく知られたガウス整数環である.
もしがZ上代数的なら, あるが存在してとなるからRの線形基として
をとれる(但しは原始4乗根).
であれば, この環の任意の元はと表され, との積
を考えることで, R上の既約性条件が得られる.
Rの単元を確定するため上の積(I)をxyとおいて, xがRの単元であるならば,
が必要である. 中辺はの場合であり, 右辺でを仮定すると, 行列論から
を満たすtの存在から, を除けばがRの単元である. 逆にRに以外の単元が存在するためにはとなる整数mが存在することが必要.
今この様なmの存在を仮定する.
(II)の右辺からでmはacを割り切らない. である. で今を仮定しているからを得る.
(II)の左辺を加えて
これはがR上単元であるための必要条件を与える. 詳しくはを固定したときの方程式(III)の整数解(c,d)の有無が決定する.
具体的に一つ計算してみよう.
とおく. このとき
を得る. 最後の方程式が有理解を持つことはHilbert記号による判定法により, を満たすことから分かる(vは素数全体を走る). しかし今のところこれ以上のことは分かっていない.
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イデアルに関する数々の命題
まずは重要な次の定理の証明を与える.
命題. のイデアルを含むAのイデアルの間には1対1対応が存在する.
証明. 対応を考える.
任意のにおける積は, 剰余環の定義に従ってwell-defined, つまりであったことに注意する.
つまり任意の元について, (集合として)と書いて良い. このとき, で生成される単項イデアルをに移す対応:
がそのようなものを与える. がIを含むことはイデアルの和の定義から(), Aのイデアルであることも明らかであろう.
今の構成はが有限生成であるときには問題ない. が無限集合であるときにもと定義すれば, 右辺がIを含むことは有限の場合と同様に分かり,
任意のが (但しは有限個を除いて0)と表せることからイデアルの公理も満たす.
を逆にのにおける剰余類を対応させるものとして定義すれば, が互いに逆の対応だということはすぐ分かる.
命題. Aを環, そのイデアルを, Mを有限A加群とすると,
証明. なら, Mの元yに対し, 写像はMの上の凖同型写像で(Mにしてみれば定倍写像である), これを単にxと書く, に注意し, 行列式の技巧を使うと, で,
を満たすものが存在する(はMの写像として0). xはの元であると同時にAの元でもあるから, ゆえに 逆はMの元を掛けてやれば明らか.
集合に実数Rから誘導される位相を入れた空間を(X,R), Rを全順序集合と見做すときに誘導されるXにおける順序位相を入れた空間を(X,O)とする. ここには無限と考えてよい.
(X,R)においては開集合である(0の左近傍で可算無限に多くの元を含みうるが, その元の間にはRに誘導された位相による稠密な元が非可算個存在, これらは開集合の合併で表され, は閉集合となる).
一方(X,O)においては集積点である(一点集合1を除く閉包, すなわちを含むXの最小の閉集合はX自身であり, 1はこれに含まれるため).
この違いは, 順序位相では順序≦による(上側および下側)切片が準開基を規程するため, 稠密性は位相に影響しなくなる.
命題. 環S上の環Rの元の列が与えられたとき, 剰余環の同型
が成立する.
証明. Rのイデアルをと定義し,
に帰納法を適用すれば良い.
同型(k)は上への環準同型を
で定義することで, 核がとなることから従う(ならだからの部分は落とせる. 逆にを満たすのはとなる場合に限るから, を含む最小のイデアルが核である).
同型(l)はRの係数環Sをで考える環準同型の核がであることから分かる.
加群のアルティン性とネータ性は独立のものである. Zは加群としてみる場合, 部分加群はnZの形なので, 任意の自然数にその素因数分解によって加群の上昇列を対応させる写像が存在し,
となるから上昇列は常に有限でネータ的. 一方素数は無限個存在するからアルチン性は持たない. 素数pの巾を分母に持つ有理数は通常の分数の和の演算で加法群Wをなし(), 整数を0に等化したW/Zもまた自然に加群と見做せる.
で, この加群はのようなものを部分加群として真に含む. 先ほどと類似の写像により
で減少列は常に有限で止まるが増大列は止まらない.
Boolean Ring(ブール環)とvon Neumann Regular Ring(フォン・ノイマン正則環)に関して
Boolean Ringの定義は, 「可換環Aで, 全てのに対しを満たすもの」である. ここでAに乗法単元を含むかは問わない.
まず次の一般的な性質を示す.
(i) .
(ii) 任意の素イデアルpは極大イデアルで, .
(iii) Aのすべての有限生成イデアルは単項イデアルである.
(i)証明. aをAの単元とする. . 最後の等式から
(ii)証明. pを真に含むイデアルをIとし, を取っておく. このxに対し,
故に. これはpが極大であるということである.
(iii)証明. 帰納法でAの有限生成イデアルが2つの元で生成される場合を考えれば十分である.
主張:
はイデアルの定義から明らかである.
とおけば,
により, 生成元の間のA線形写像を与える.
具体例からboolean ringのイデアルの形を見てみる. 集合Aの巾集合系をXとおいて, Xにおける積()と和()を
と定義すると, これはとするboolean ringになる.
実際として,
と演算の可換性()および結合律等からXが可換環の構造を持つことが分かる.
からこれがboolean ringの構造を持つことも分かる.
よってXはこの演算でboolean ringを成す. 今イデアルIをX上で生成されるイデアルとする.
との元との積を考えれば,
となる. このとき剰余環はとの2元からなる(これらはそれぞれ「cを含むAの部分集合の族の成す類」,「cを含まないAの部分集合の族の成す類」として特徴付けられる).
またこの積()において, 任意のに対しuを含むXの任意の元がを満たすので, von neumann regular ringでもある.
スペクトルのZariski位相性質について
環Aの任意のイデアルをIとし,
がSpec(A)上Iの閉近傍を定めることを見る.
命題.
証明. はIを含むある素イデアルであるから, Iより小さいイデアルを含む素イデアル全体に含まれる. I’についても同様だからは正しい.
がV(I)に入らないとしよう. この場合JはIを含まないが, もしI’も含まないとすれば, 素イデアルの定義から. これはJの定義に矛盾する.
命題.
証明. イデアルの定義から. 故には明らか. とする. このとき上と同様Jの素イデアルの性質からだがに矛盾.
命題.
証明. 左辺はという全てのイデアル(非可算個の場合もある)を含む素イデアル全体で, と等しい. イデアルJがイデアルIを含むことと, J=I+I’ (I’もあるイデアル)と表せることが同値であることを言えば良い.
任意のイデアルがだからならJはIを含む. なら問題とならないので, を仮定する. で生成されるイデアルを, で生成されるイデアルをとかく.
このようにして得られるイデアルの増大列は一般にはJを生成しないが, Jがネター環ならIを除く有限個のイデアルの列の和を改めてI’と書くことで上の表示を得る. Jがネター的でない場合は, Jそのものでなく, Jに含まれる有限生成部分環をとることでそのような(ものに近しい)表示を得る.
以上では有限和, 任意個の交わりに閉じており, であるからはを閉集合系とする位相空間を成す.