無限級数和の解法 §1: 準備

数列の部分和 s_n=\sum\limits_{k=1}^n a_nの極限, 無限級数和の収束判定法は幾つか知られているものの, その和を求めるのは容易ではないのです。ここに自分用ノートとして重要なアプローチを解説します.

§1. 準備

まずよく知られている次の4つの級数展開をよく知っておくこと.

{\rm exp}(x)=1+x+x^2/2+x^3/6+\cdots+\frac{x^n}{n!}+\cdots \quad (\forall x\in \mathbb{C})

{\rm sin}x=x-x^3/6+x^5/120-\cdots + \frac{(-1)^n}{(2n+1)!}x^{2n+1}+\cdots \quad (\forall x\in \mathbb{C})
{\rm Log}(x+1)=x-x^2/2+x^3/3-\cdots + \frac{(-1)^{n-1}}{n}x^{n}+\cdots\quad (|x|\leq 1)
{\rm Arctan}x=x-x^3/3+x^5/5-\cdots + \frac{(-1)^n}{2n+1}x^{2n+1}+\cdots \quad (|x|\leq 1)

次に, これら4つの展開から他の初等関数の級数展開の導き方を知っておく.
例えば上記{\rm sin}xを(項別)微分して{\rm cos}xの展開を得る.
{\rm cos}x=1-x^2/2+x^4/24-\cdots + \frac{(-1)^n}{(2n)!}x^{2n}+\cdots

双曲線関数{\rm sinh}, {\rm cosh}も, 対応する三角関数{\rm sin}, {\rm cos}の展開式における(-1)^nの項を除いたものと考えれば覚えやすいだろう.

そして一般二項定理の適用例としても, 逆三角関数の級数形の良い特徴としても次の例は重要だと思う.

    \[\displaystyle{\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}} = (1-x^2)^{-1/2} = \sum\limits_{k=0} \binom{-1/2}{k}(-1)^kx^{2k} \\ = \sum\limits_{k=0} \frac{-\frac{1}{2}(-\frac{1}{2}-1)\cdots (-\frac{1}{2}-k+1)}{k!}(-1)^kx^{2k} \\ = \sum\limits_{k=0} \frac{(2k-1)!!}{(2k)!!} x^{2k} \quad ((-1)!!=0!!=1)\]

また, 求めたい級数の和が似通った既知関数に帰着できればいいが, 現実問題できない(もしくは思いつかない)ことがほとんどなので, 微分方程式と合わせて組み合わせ論的なアプローチも考えなくてはいけない. そこでまずは応用の広い多項定理を見ておこう.

    \[\displaystyle{ ({\rm div}{\bf x})^n = \sum_{{\bf p},{\bf x}\in \mathbb{N}^u; {\rm div}{\bf p}=n} \binom{n}{\bf p}{\bf x}^{\bf p} = \sum_{{\rm div}{\bf p}=n} \frac{n!}{p_1!p_2!\cdots p_u!}x_1^{p_1}x_2^{p_2}\cdots x_u^{p_u} }\]

具体的に無限級数和に応用するために, 次のような例を考えよう.

    \[y=\displaystyle{\sum_{k=0}^\infty a_kx^k}=a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots +a_nx^n+\cdots\]

に対し, y^mにおけるx^nの係数r(m,n)を見るのである.
この場合無限級数なので変数の数は無限(u=\infty)だが, x^nの係数を見るのにx^{n+1}以上の次数を持つ項は無用である. つまり上の定義におけるu次元ベクトル{\bf p}は実際にはn+1次元ベクトルになる(a_0も考える)ので, u=m, {\rm div}{\bf p}=m, x_k=a_k\quad (0\leq k\leq n)とおけば,

    \[\qquad \displaystyle{ r(m,n)= \sum_{{\rm div}{\bf p}=m} \frac{m!}{p_0!p_1!\cdots p_n!} a_0^{p_0}a_1^{p_1}a_2^{p_2}\cdots a_n^{p_n} }\]

を得る.

    \[\begin{tabular}{|c|c|c|c|c|} \hline (m,n) & 0 & 1 & 2 & 3 \\ \hline   0   & 1 & 0 & 0 & 0 \\ \hline   1   & \(a_0 \) & \(a_1 \) & \(a_2 \) & \(a_3 \) \\ \hline   2   & \(a_0^2 \) & \(2a_0a_1 \) & \(2a_0a_2+a_1^2 \) & \(2a_0a_3+2a_1a_2 \) \\ \hline   3   & \(a_0^3 \) & 3\(a_0^2 a_1 \) & \(3a_0^2a_2 + 3a_0a_1^2 \) & \(3a_0^2a_3 + 6a_0a_1a_2+a_1^3 \) \\ \hline \end{tabular}\]

このような具合なので, yの斉次方程式\psi(y)=p_ny^n+p_{n-1}y^{n-1}+\cdots +p_0におけるk次係数は\displaystyle{\sum_{i=0}^n p_ir(i,k)}で与えられることが直ちに示される.

応用上も審美上も、線型微分方程式との兼ね合いで比較的容易に(解析)関数が決定されることがあるようなので, 具体的な計算に慣れておくことに越したことはないと思う.